名称:
ポストモダニズム論争(Postmodernism Debate)
概要:
ポストモダニズム論争とは、1980年代から1990年代にかけて主に哲学や社会科学、文学理論などの分野で起きた知的・学術的論争である。ポストモダニズム的思想(相対主義や脱構築、メタナラティヴ批判など)を巡り、近代主義や啓蒙主義的立場との間で激しい議論が展開された。
背景:
1960〜70年代に、ジャン=フランソワ・リオタール、ジャック・デリダ、ミシェル・フーコーらフランスの哲学者たちが伝統的な近代的価値観や知識の基盤(普遍主義、理性主義、進歩思想など)を批判し、「ポストモダニズム」として総称される新しい思想が広まった。この思想が欧米諸国に浸透する過程で、保守派や近代主義を擁護する知識人・研究者との間で激しい対立や議論を呼んだ。
事件:
ポストモダニズム論争では以下のような論点が中心となり議論が行われた。
- 真理や価値の相対性を強調するポストモダニズムが、科学的合理性や客観性を損なうとして批判された。
- アラン・ソーカルが1996年に起こした『ソーカル事件』では、ポストモダン的文体の難解さや非合理性が揶揄され、大きな社会的注目を集めた。
- ジャン=フランソワ・リオタールによる『ポストモダンの条件』(1979年)で示された「大きな物語の終焉」は、論争の主要なキーワードとなり、多くの議論を呼んだ。
これらの議論は主に学術誌や大学、シンポジウム、著作の中で展開された。
影響:
ポストモダニズム論争は、哲学や社会科学の方法論に対する再検討を促し、「知識の客観性」や「真理の妥当性」といった伝統的な概念の再考を迫った。また、文化的多様性や多元的価値観を認める風潮を促進すると同時に、文化戦争(カルチャーウォーズ)のような政治的対立をも生んだ。
この論争を通じて、ポストモダニズムという概念は広く知られるようになり、現代思想や文学批評、社会学的理論に決定的な影響を与えた。
関連する人物・出来事:
- ジャン=フランソワ・リオタール(哲学者、『ポストモダンの条件』著者)
- ジャック・デリダ(哲学者、脱構築の提唱者)
- ミシェル・フーコー(哲学者、知識と権力の理論を展開)
- ジャン・ボードリヤール(社会学者・哲学者、シミュラークル理論)
- アラン・ソーカル(物理学者、『ソーカル事件』の主導者)
- ソーカル事件(1996年に起きたポストモダニズム批判の事件)
- カルチャーウォーズ(米国を中心に文化的価値観を巡り起きた論争)