Metadata
- Author: ロルフ・ドベリ、安原 実津
- ASIN: B08WCCD36X
- Reference: https://www.amazon.com/dp/B08WCCD36X
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読んだきっかけ
バレットジャーナル を初めて、それをちゃんとやることで余分な時間がなくなり、自然とニュースがない生活を送っており、すごく調子が良かった。僕は毎日その日に過去に起きたことを振り返る年表を作っているんだけど、その過程で、過去ばかりを知って、最新の情報を知らないことはまずいのかもしれないと思い始めた。そしてどのようなニュースを得るべきか、どのような媒体で、どのようなジャンルのものを手に入れるべきか、どんな方法で、と探す過程でこの記事に出会った。そもそもニュースを見てはいけないなんてことは考えたこともなかったので、これは読まないとと思い、読んだ。結論としては、ニュースを見る必要もないと考えるようになった。この本の言うとおり、振り返るとバレットジャーナルを始める以前の僕はAI関連のニュースに踊らされている状態で、自分が本当に取り組むべきことにほとんど取り組めていなかったし、その経験と現在の経験を比較するだけで、ニュースが害になることや、それを断つ意義も経験的に理解できる。著者の言う通り、まずはニュースのない生活を30日間は続けよう。
感想文
「現在の私たちとニュースの関係は、二〇年前の私たちと砂糖やファストフードの関係と同じである。」 著者はストア派の哲学者の生き方を参考に、現代におけるより良い生き方の一つとして、ニュースを断つことを進めている。ニュースを「短くまとめられた世界各地からの情報」として定義し、その対極に、長文記事、エッセー、特集記事、ルポルタージュ、ドキュメンタリー番組、本などを挙げている。重要なものとは、厳密には「良い決断を下すのに役立つもの」、広義には「世界で起きている出来事のつながりを理解するのに役立つもの」とだすれば、ニュースで取り上げられることのほとんどは新しいだけで重要ではない。スタージョンの法則に従えば、90%以上がガラクタで、かつほとんどが自分自身の影響の輪の外側の事柄である。ニュースは実世界の複雑な関係を無視して、単純化されて誤った世界理解を助長してしまう。システム思考に代表されるような世界観は、ニュースで表現するのは難しいのだろう思う。また、著者によれば、 ネガティビティ・バイアス、確証バイアス、後知恵バイアス、利用可能バイアスといった人間のバイアス群を利用し、強化してしまい、私たちは感情ヒューリスティックによって非合理的に 意見の火山 を発火させ、その結果年間1ヶ月ほどの時間を奪うという。著者はその代わりに影響の輪の外側の意見を持たない自由を奨励しているし、イデオロギーに汚染されないよう、あえて反対意見を取り入れることを奨励している。
また、ニュースは前帯状皮質の細胞の数を減らし、集中力や意志力 を阻害し、ワーキングメモリから長期記憶へ残らないような雑多な情報で埋め尽くしてしまう。また継続的に不快な情報を得ることで、コルチゾールによって、交感神経が刺激され、免疫システムは弱まる。意志力は短期的には筋肉のように機能するため、ニュースによって意志力の枯渇を起こしてしまう。それを繰り返せば、学習性無力感のような状態になり、自分が取り組んで変えることができることへの意欲すら無くしてしまう。
また、社会的にもテロリズムを助長してしまう問題などがある。そのほかにも、 天然痘を根絶させたチームを率いたドナルド・ヘンダーソンのような重要な人物ではなく、虚偽の名声を持つ人物が有名になってしまうというクラウディング・アウトのような現象も起こるし、看護師のナイラの証言に代表されるようなフェイクニュースの流布、プロパガンダや、プロダクトプレイスメント、PRのような利益誘導の意図も相まって、軍拡競争や 底辺への競争のように、相乗的に過激なニュースが生まれる。個人的にはこれは、オールドメディアと呼ばれるような、TV、新聞などだけでなく、ニューメディアと呼ばれるようなSNSや動画投稿サイトでも同様だし、より顕著なように思う。特にエコーチェンバー効果やアルゴリズムによって、新しいメディアの方が、極端なイデオロギーに汚染される可能性がより高いようにも思う。また著者は、民主主義とメディアの関係において、近代民主主義の父と呼ばれるような(ルソー、ヒューム、ロック、モンテスキュー)哲学者たちの生きている時代にニュースが存在しなかったことから、民主主義にメディアが必要だという主張を退けていると語る。逆に、ニュースによる民主運動であるアラブの春の事例を引用し、その主張に対抗する証拠としている。また、前述するような状況は、調査報道や解説ジャーナリズムといった、適切なジャーナリズムによって食い止められる可能性もあるが、そのためには消費者である我々の行動が必要だといっている。ニュースランチのような取り組みや、影響の輪の内側の専門誌などの長いメディアに触れること、あえて 自分の意見を持たない自由を提唱している。もしセレンディピティが欲しければ、書店に行って自分の専門外の本を読むことを進めている。
AIとの関連について
ニュースがガラクタだとすれば、インターネットにおけるAIのアウトプットについても考えざるを得ないと思った。AIのインプットはインターネットや人間が蓄積してきたデータを選別したものであり、それによって学習されている。その学習結果のモデルに対して、あるコンテキストを与えると、そのコンテキストに基づく予測がアウトプットとして出力される。そしてそのアウトプットをそのままインターネットに流してしまうと…?必然的に循環参照の様な構図になるし、ある時点から、インターネットの情報の質が変わってしまったと言って差し支えない様にも思う。
AIは質のいいコンテキストを与えれば、質のいい出力をする。AIのアウトプットをインターネット上に流してしまうような人が本当に適切なコンテキストをAIに与えられているか、個人的には疑問である。また、企業などがAIで自分たちに有利な情報を大量に出力して流布するようなある種のプロパガンダを行うことを考えると、まだ汚染されていない水源を知ること、そこから情報を得ることの重要性がわかる。
AIの登場により、信頼できる情報筋を確保する重要性がより急務になった。
個人的には、また、ルソーなどの時代、民主主義の黎明期で現在のメディアが存在しない時代の事例がAI時代における政治や民主主義、また哲学のあり方を考える上で重要な事例になる様に思う。この時代や人物、芸術や音楽について深掘りしてみたい。
推奨される行動
- 30日間のニュース断ち
- 定期的に他の専門分野の人たちと会う
- ひと月に一度、半日時間をとって大きな書店に出かけ、できるだけ多くの分野の新刊に目を通す
- 本を読むことについて
- 本は続けて二度読む
- 週に一冊は本を読む
- 読む前に、そのテーマについて自分なりの意見を作る
- 20ページ読んで見識が広がらない本は止める
- 著者おすすめのメディア
- ザ・ニューヨーカー
- MITテクノロジーレビュー
- フォーリン・アフェアーズ
- エコノミスト
- 専門家の機構論文をまとめたもの
- 知る、学ぶということにおける質問
- なぜするのか?
- 一体どんな対価が得られるのか?
- 世界をもっとよく理解できるようになるか?
- 能力の輪は充実するか?
- 前よりももっと良い決断ができるようになるか?
- 集中力が上がったか?
- 前よりも心が平静になったか?
- ビル・ゲイツの考える週
- 自分の能力の輪にあった時間を捻出して取り組むと良さそう
- ニュースランチ
- 反対の立場の意見を自分の意見と同じくらい論理的に主張できる状態を、そのテーマについて語り、投票できる状態とする
キーワード
- ニュース
- ストア派
- メメント・モリ
- ニュースランチ
- 自分の意見
- 影響の輪
- 意志力
- 前帯状皮質
- 意志力の枯渇
- 確証バイアス
- ネガティビティ・バイアス
- 感情ヒューリスティック
- 意見を持たない自由
- 長期記憶
- ワーキングメモリ
- ニコラス・カーの調査
- 後知恵バイアス
- 利用可能バイアス
- 意見の火山
- 虚偽の名声
- 交感神経
- コルチゾール
- 免疫システム
- イデオロギー
- あなたの世界観を手放さざるを得ないのは、どんな出来事に遭遇したときですか?」
- システム思考
- テロリズム
- ドナルド・ヘンダーソン
- 天然痘
- クラウディング・アウト
- 学習性無力感
- 底辺への競争
- 看護師のナイラの証言
- フェイクニュース
- オールドメディア
- ニューメディア
- プロダクトプレイスメント
- PR
- プロパガンダ
- セレンディピティ
- スタージョンの法則
- ボランティアの浅はかな考え
- ノンストップの難題処理マシン
- アラブの春
- アテネ
- 軍拡競争
- 調査報道
- 解説ジャーナリズム
アイデア
- ニュースという人間社会の注意機構と脳の意識の関係
Highlights
ニュースは、自律神経系のひとつである「交感神経」を休ませない。感情を乱されるような話を見聞きすると、そのたびにストレスホルモンである「コルチゾール」が放出される。血液中にコルチゾールが放出されると、その量の 多寡 にかかわらず、免疫システムは弱まり、成長ホルモンの生成も妨げられる。 ニュースを消費すると、あなたの体はストレスにさらされる のだ。 — location: 1074
コルチゾールは覚醒ホルモンでもあるから眠れなくなりそう
最も危険なのは、イデオロギーに関する「確証バイアス」だ。イデオロギー(社会思想、政治思想)は、私たちの脳がつくり出す最も愚かしいもののひとつだ。 イデオロギーを持つということは、自分で自分の精神を閉じ込める牢獄をつくり上げることにほかならない。イデオロギーの強力さは意見の一〇乗で、あらゆることに対する見解をひとまとまりで提供し、それだけでまるごとひとつの世界観を構成する。脳に高圧電流のように作用して、私たちにさまざまな短絡的行動をとらせるばかりか、ヒューズをすべて焼ききってしまう。 何があろうと、イデオロギーや教義(宗教や宗派の教え)には近寄らないほうがいい。あなたが少しでも共感を持てるようなイデオロギーや教義がある場合は特に要注意だ。イデオロギーを持つことが間違いなのは確実で、あなたの世界観が狭まって、結果的にお粗末な決断をしてしまう。 — location: 1141
ニュースは極端に短くなければならないにもかかわらず、起きた出来事についても綴らなくてはならない。それを可能にするには、ものごとを容赦なく簡潔化するしかない。 ちょっとした自転車事故だろうが世界規模の経済危機だろうが、何が起きたかとは関係なしに、常にひとつ、ふたつの原因だけを挙げるしかない。そのほかにもある多くの原因や、それらの原因が重なり合ってその結果が引き起こされたことや、結果と原因のあいだで起きた反作用について(それが強化作用であっても鎮静化作用であっても)語られることはない。 ニュースを消費すると、「世界は実際よりも単純で説明可能だ」という錯覚に飲み込まれ、あなたの「決断の質」は損なわれてしまう。 — location: 1194
年表についても、あくまで事実の羅列、自分がよく知っていることに限る方がいいかもしれない。年表が過去のニュースだとしたら、同じ事が言えそう
それなのに私たちは──複雑な質問の場合は特に──すぐに自分の立場を決めたがる。そしてそのあとになってようやく頭で理性的に考え、自分の立場を裏づける理由を探しだす。この思考過程は心理学で「感情ヒューリスティック」 と呼ばれている。 — location: 1330
これはある、感情の合理化も
要は、「何に対しても意見を持たなくてはならない」と考えるのが大きな間違いで、あなたの意見の九〇パーセントは不要なのである。 — location: 1340
これは安心出来ることではある
この賢帝は、二〇〇〇年近くも前にまったく同じことを推奨している。「あなたには、あれやこれやに対して意見を 持たない 自由も、そうすることによってあなたの心を波立たせない自由もある。その性質上、ものごとが自ら私たちに判断を強いることはないのだから」。 — location: 1347
至言だ
それどころか、実際にはもっとひどいことが起きている。得られるものがないだけでなく、あなたが失っているものはほかにもある。「集中力」だけでなく、もっと価値あるものに使うべき「意志力」まで失っているのだ。 — location: 1402
意志力が課題だと感じている
ロンドンの見習いタクシー運転手は、タクシーの免許を取るために非常に多くの知識を詰め込まなくてはならない。ロンドンには二万五〇〇〇本もの通りと無数の観光名所があるが、タクシー運転手は伝統的にそれらを余すところなく知っていなければならないことになっている。 当然、ロンドンでタクシーの運転手になるには三年から四年の研修期間が必要になる。大都市の全体図を脳に保存するには、それだけの長い時間がかかるのだ。 おそらくこうした暗記型のタクシー運転手の研修も、グーグルマップなどのおかげでまもなく時代遅れになるのだろう。だがそうなる前に、ロンドン大学の研究者であるエレナー・マグアイアとキャサリン・ウーレット、ヒューゴ・スピアーズが、この研修を対象にすでに実験を行っている。 彼らは、タクシー運転手の脳にある道に関する知識を、どうにかして観察することはできないだろうかと考えた。「タクシーの運転手になると、脳の構造は変化するのだろうか?」 という疑問を持ったのだ。 彼らは「見習いのタクシー運転手」と、比較対象グループとして選んだ「バスの運転手(常に決まったルートを走るバスの運転手は、二万五〇〇〇本もの通りを覚える必要がないため)」を対象に、折に触れて磁気共鳴画像法(MRI)検査を行った。 検査をはじめた当初、両グループの脳に差は見られなかった。だが数年後、タクシー運転手が免許を取得するころになると、脳の海馬(長期記憶の形成に重要な役割を果たす領域)の構造に変化が認められるようになった。 タクシー運転手の海馬の神経細胞は、バスの運転手よりもずっと発達していた のだ。 脳の構造の違いは、ときが経つにつれてどんどん大きくなった。しかしタクシー運転手は、「頭のなかの道路地図」に関しては秀でていたものの、幾何学的な図を新たに… — location: 1434
脳の構造の喧嘩に対する興味深い研究。プログラマやミュージシャンという専門家における脳の変化についても考えてみたい。例えば、プログラマであることと、ミュージシャンであることがどのように両立し得るのかということを、脳の構造として裏づけながら考えることができるかもしれない。また逆に、それが両立し得ないことがわかるかも。
底辺への競争[世界規模の経済競争によって、労働者の賃金や労働条件が最低水準に落ち込むこと]」が起きているのは、ニュースの消費者である 私たちの 行動が原因なのだから。 — location: 1708
底辺への競争について調べる
本や長文記事を読む前には必ず数分時間をとって、目の前にあるテーマについてじっくり思考する — location: 1796
やってみよう
自分にとって何が重要かを自分で決断する自由は、よい人生の基本要素だ。 — location: 2113
至言だ
「反対の立場の意見」を、「自分の意見」と同じくらい論理的に主張できるようにならなければ、そのテーマについて語り、投票する資格はない ように私には感じられるからだ。 — location: 2228
これはいい思考のエクササイズだと思う